流れ星は、星のかけらが偶々地球の引力に引っ張られ、大気圏での摩擦で発光する現象だと思っている人も多いのではないか。事実は逆で、地球が宇宙塵の中を通るとき、その塵が地球の大気圏で気化する際に生じる発光現象である。彗星の軌道上には、彗星が放出する塵が密集しており、彗星の軌道と地球の軌道が交差している場合、地球が彗星の軌道を横切る際、塵の粒がまとめて地球の大気に飛び込んでくる。いわゆる流星群である。その到来時期を予測できるのは、地球と彗星の軌道が交わる時期が計算できるからで、偶々星が落ちてくるのなら、予測はできない。中には大きなものもあって、地上に到達した際「クレーター」と呼ばれる窪みを作る。クレーターには様々なものがあるが、多くは円形の窪みで、その周囲をリムと呼ばれる襞が取り囲んでいる。人体には9つの穴が開いているが、作者は耳朶をリムと見立て、「耳」が一番クレーターに近いと思ったのだろう。人体を構成する分子は、遠くは宇宙創成のビッグバン由来。人間もある意味星の欠片、宇宙とは縁もゆかりもある、懇意の仲なのである。松永典子には他に/メビウスの輪を抜けそこらじゆうに鳰/山に雪どかつとパスタ茹でてをり/行く春のお好み焼きを二度たたく/ローソンに秋風と入る測量士/舟に似て秋夕焼を出てきたる/裏窓に補正下着と風鈴と/えのころへ遊び足りない風が吹く/など。