「故山」は「故郷の山」のこと。「襞」とあるので、のっぺりとした山ではなく、谷筋が深い山なのだろう。日永とはいえ、夕方涼しくなっても戻ってこない「父」を、娘は「探し」に出たのだ。「父」は枝打ちなどの山仕事にでも出たのだろうか。久しぶりの娘の帰省に、故郷の味、谷川筋に生えるミズなどの山菜や山女魚でも採りに行ったのかもしれない。入り慣れた山とはいえ、夏は熊にとって餌が少なく厳しい季節。人を襲うことが多いのも、この季節である。帰りが遅いと心配になるのも無理はない。「おとうさ~ん」と呼ぶ娘の声が聞こえるようだ。政野すず子には他に/水母みな西へ漂う眠りの岸/藪枯らしの花あふれいる真昼の夢/荒れ放題のここがふるさと鬼薊/蝉穴のひとつに呼ばれ目覚めたる/一個二個風の味する吊し柿/子の去りしあとを転がる紙風船/種袋わが身に根付くけむりとや/など。