「内灘」は石川県の日本海側、金沢市の北に隣接していて、砂丘で有名である。この砂丘地帯を1952年米軍が試射場として接収、内灘闘争と呼ばれる反対運動がおこり、57年返還された。内灘砂丘によって堰き止められてできた河北潟は、現在干拓と淡水化により加賀蓮根の一大栽培地となっている。「白蓮」とあるように、その花色は通常のピンクではなく純白だ。「白蓮」は蓮如、日蓮などの名前に「蓮」の一字が使われているように、「和」及び仏教国日本の象徴、「白シャツ」はおそらく「洋」及びアメリカの象徴だろう。「彼我ひるがえり」は、文字通りには「白蓮」の葉も花も、そして自分の着ている「白シャツ」も、風に「ひるがえっている」という意味だが、暗にアメリカが態度を「ひるがえした」が故に、自分も「内灘」の砂丘へ自由に行けるようになったという、状況の変化をも示唆している気がする。俳句に安易に地名を入れることは良くないとされるが、歴史的に意義ある地名は、それだけで多くを語ってくれる。ここぞという時に地名を上手に取り入れると、奥行き深い句になるという、掲句はまさにそのお手本のような句である。古沢太穂には他に/うしろ手が楽ですともう石榴たわわ/ロシア映画みてきて冬のにんじん太し/炉を囲み顔面土器に似るは誰ぞ/代々木踏切越す老優と咳落し/怒濤まで四五枚の田が冬の旅/冬雲の大きしじまに歩み入る/夢に芹摘み溜めており寒に入る/など。