「秋よりも淋しい彼」とは、どんな「彼」だろう。おそらく群れるのが嫌いで、一匹狼的なところがあり、協調性がなく、同調圧力にも頑として屈しない、どちらかというと孤立しがちな、そんな「彼」のような気がする。作者はそういう「彼」が「欲しい」、と言う。ということは、彼女にも多分に似たようなところがあるからだろうか。それとも無い物ねだりで、自分に無いものを「彼」に見て、惹かれているのだろうか。句柄から見ると、どうも前者のような気がする。創作は畢竟孤独な作業だ。自分の独自性を追求することを余儀なくされるから、大衆に必ずしも受け入れられるとは限らない。反発や無視を覚悟できなければ、最初から創作なんかには関わらないだろう。自分でなければできない何か、その内的衝動に突き動かされて、人は創作する。大事なのはその「内的衝動」があるかどうか。おそらく作者は「彼」に、その「内的衝動」が、紛れなくあることを看て取ったのだろう。それを知った以上、女の母性、本能は、もう「彼」から目を離せないのだ。村田ミナミには他に/蕺草(どくだみ)の花もあなたもくどいのだ/かえるよりかえるのこえでうがいする/劣情はジジジジジジジジジとしゃんでりあ/歩け歩け薔薇に心配されている/汗ばんだ三番星に水あげる/疲れっぽくって忘れっぽくって冬桜/など。