「秋よりも淋しい彼」とは、どんな「彼」だろう。おそらく群れるのが嫌いで、一匹狼的なところがあり、協調性がなく、同調圧力にも頑として屈しない、どちらかというと孤立しがちな、そんな「彼」のような気がする。作者はそういう「彼」が「欲しい」、と言う。ということは、彼女にも多分に似たようなところがあるからだろうか。それとも無い物ねだりで、自分に無いものを「彼」に見て、惹かれているのだろうか。句柄から見ると、どうも前者のような気がする。創作は畢竟孤独な作業だ。自分の独自性を追求することを余儀なくされるから、大衆に必ずしも受け入れられるとは限らない。反発や無視を覚悟できなければ、最初から創作なんかには関わらないだろう。自分でなければできない何か、その内的衝動に突き動かされて、人は創作する。大事なのはその「内的衝動」があるかどうか。おそらく作者は「彼」に、その「内的衝動」が、紛れなくあることを看て取ったのだろう。それを知った以上、女の母性、本能は、もう「彼」から目を離せないのだ。村田ミナミには他に/蕺草(どくだみ)の花もあなたもくどいのだ/かえるよりかえるのこえでうがいする/劣情はジジジジジジジジジとしゃんでりあ/歩け歩け薔薇に心配されている/汗ばんだ三番星に水あげる/疲れっぽくって忘れっぽくって冬桜/など。
コメント
コメント一覧 (2)
秋よりも淋しい彼を温める自分という母性から出てくる温かさで自分も温まりたいという感じですよね。
さびしいというのに、寂しいと淋しいと違う漢字があるのかぁと改めて気付きました、どこが違うのかと思い調べたら、寂しいは雰囲気だったりで、淋しいは心が泣きたくなるほどさびしいということだそうですね。へぇ~でした。
蕺草(どくだみ)の花もあなたもくどいのだ
と
かえるよりかえるのこえでうがいする
が気に入りました。
生活感が出ていて面白いです。
nonsyaran
がしました
「寂しい」と「淋しい」には、そんな違いがあったんですね!
この作者の句は口語調が軽快で、型を意識したしゃちこばったところがなく、ライトヴァ―スなさしづめ俵万智調の俳句、という感じですね。
nonsyaran
がしました